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郵便ポストが赤いのは
2012/02/02 12:36 / ひかり町スピンオフ

 ひかり町ガイドブックより:

【ものがたり】
『郵便ポストが赤いのは』
 なにしろ生まれてその方ポストは空色と信じていたので、初めて赤いポストを見たとき
「ぽぽぽすとがあかいぃっ」
 と叫んでしまい、それが通りすがりのサラリーマンのツボにはまり、さらにはそれが近くにいた子連れの主婦に移り、あっという間にその一体に笑いの発作が伝播して、10メートル向こうの人など、なんで自分が笑っているかわからなかったにちがいない。
 そんな恥ずかしい初遭遇を、すでに済ませていた兄は、帰り道、僕にこう耳打ちした。
「知ってるか、空色のポストにいれた手紙は空色の郵便受けに、赤いポストに入れたら赤い郵便うけに届くんだ」
 ああだから色々な色があるのかと、むろん今となってはもちろん信じていないのだが、古いが一戸建ての家で一人暮らしを始めた時、郵便受けを空色に塗ったのはそんなわけだ。
 あいにく途中で雨が降りだしたので、サンルームで作業をして、そのまま一晩そこで乾かしていた。
 翌朝、乾き具合を確かめにいくと、郵便受けの蓋を押し開いて、大量の郵便が床で雪崩を起こしている。
 二、三通拾い上げてみるが、宛名は僕じゃない。
 ひとまずすべてを取り出して、床に積み直した。と。その間にも、かたん、と手紙が届く。
 兄もたまには本当のことを言うらしい。自分がずいぶんまずいことをしてしまったのには気付いたが、どうしようこれ。無かったことにできないだろうか。
 一番上の手紙を、半ば無意識に郵便受けに突っ込む。と、なんの抵抗も音もなく落ちていく。蓋を開けてみた。からっぽ。手紙がない。
 その日は一時間かけて手紙を郵便受けに入れ続けた。
 どうやら朝方に大量に届く手紙はひかり町宛で、都度都度届くのは、ひかり町のポストから投函された物のようだ。塗り直したいが送り返せなくなると困るので、郵便受けはサンルームに置きっぱなし、郵便物を宛名も見ずに押し戻すのが日課になった。
 宛名を見ないといっても、ダイレクトメール以外で同じ封筒を何度も目にすれば、なんとなく、覚えてしまう。いつも決まった封筒を使うのだろう、可愛い花柄とか、目の覚めるように鮮やかな花紺色の封筒とか。カモメールなんて、大量に買ったものの使い回しなのか、いつも必ず一枚入って……。
 あ、と思った時にはカモメールは宛名の残像だけを残して郵便受けの中に消えていた。
 あれ、僕宛だ。その可能性にこの一ヶ月全く気づかなかった。
 翌日、郵便受けの前で待っていると、予定の時間より少し早くに、ばん、と扉を跳ね上げて、丸めた絨毯みたいなものが出てきた。たいそう迫力のある墨字で、でかでかと僕の名が書かれている。広げてみると、一畳くらいある巨大な紙の隅っこに、ごく普通の大きさのボールペンの字で
「本日午後から明朝にかけて、一時的にポストを閉鎖します。ポストをほかの色に塗り直してください(できれば緑と紫以外が好ましいです)ただし住所とお名前の部分は空色のままで結構です。ひかり郵便局」
 とだけ書いてあった。世の中にはほかに、緑と紫のポストがあるみたいだ。
 僕は紙を裏返しに巻き直すと、表に「了解いたしました」と書いて郵便受けに押し込んだ。そのあと、銀色のスプレーを買いに行った。
 翌日、数通のダイレクトメールと共に、例のカモメールが届いた。兄からだ。
 どうやらスキューバに行ったようだ。たくさんの熱帯魚が泳ぐ中、人魚の姿の綺麗な女の子と肩を組んでいる。新しい彼女かな。どこの海だろう。
 まじまじと眺めていると、深い青のむこうに尖った岩影と、それを指輪みたいに彩る細い光が見えた。あれ?
 よくよく見れば、水の色と思っていたのは暮れかけた夏の夜空の色で、底にはすこしたわんだ町の明かりが映っている。
 これってひかり町の、リアル・スノーボール?
 いやでも、夏場って休みのはずだし、そもそも夜間営業してないし、第一、人魚の彼女、なにもつけてないけど呼吸は?
 色々と問いただしたいけれど、完全にタイミングを逸してしまった。季節はもうすぐ、秋。


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【ガイド】
『河北書店前ポスト』
砂場さん(ひかり町ガイドブック掲載)

【ガイド】
『リアルスノーボール』
空虹桜さん(ひかり町ガイドブック掲載)

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 ということで、またもひかり町でした。だめだ楽しい。変なスイッチが入ったようです。
 二次創作、設定もキャラクターも使うのは、人の褌で相撲をとるような感じで、書くの楽すぎてそれで受けてもなーと感じて、文章ではあまりやらないのですが、設定の点と点の間を紡ぐのは、よいようです。
 一応、ガイドブックがお手元になくとも楽しめるを目指して、別カテゴリを作ろうかな。
 報告にあがるのが死ぬほど苦手なのが悩ましいのですが、思い浮かんだものはとりあえず片端から書いてみます。



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