HEAVYDRUNKER
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◇人魚の休日
ひかり町ガイドブックより:
【自然】
『人魚岩』
羽衣海岸から300メートルほど沖の海底にある岩。名前の由来は、人魚の形をしているからとも人魚が住んでいるからともいわれる。干潮の時に船を浮かべれば、海面のすぐ下にその美しい見ることができる。
周囲には熱帯の魚も多く住み、夏場にはグラスボートも出ているが、人魚を見た船はかならず座礁するという伝説があるため、地元の漁師はけして近づこうとしない。
【ものがたり】
『人魚の休日』
潔くも座礁を前提として、交換可能な強化ゴムでがっちりと補強されたグラスボートを、通りすがりの岩場からそっと外し(その拍子にフィンが歪んだがまあ大丈夫だろう)人魚は陸を目指した。
今日は大潮。ニンゲンは海に出ない。人魚にとっても休業日だ。
人魚はニンゲンの町に出るのが好きだ。スイーツ最高。ただ物語の人魚のように脚と声を交換するわけにもいかないので、仲のよい天女に羽衣を借りる。
尻尾の先まですっぽり隠れるマキシ丈のワンピースを着て、羽衣を首にふわりと巻き付ければ、陸でも問題なく移動できる。少しくらい浮いていても人間は意外と気付かない。と人魚は思っている。
羽衣のお礼には綺麗な貝殻や外国のコインや鱗を渡す。人魚の鱗の虹色の輝きはいつまでも褪せることがない。天女はそれらを白い砂浜のあちこちに隠して、宝探しを楽しんでいる。
グラスボートを松の木に繋ぎ、ワンピースに着替えると、同じくニンゲンの服に着替えた天女と連れだって町へ繰り出す。
さあ今日はどこへいこう。
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【ガイド】
『羽衣海岸』
タキガワさん(ひかり町ガイドブック掲載)
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人外の生き物が増えてきた。
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