HEAVYDRUNKER
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◇無何有郷
ひかり町ガイドブックより:
【ものがたり】
『無何有郷』
室長の「チョーコーインムサクジに行ってくる」が、行き詰まったから仮眠してくるという意味なのは、最近ではもう承知しているのだが、最初は全く意味がわからず、律儀に調べたりもした。見つかったのはガイドブックの一行だけで、やはりどんなところか想像がつかず、はてさてと考える内に自分も眠りに誘われる。
夢の中で、町中をさまよう。果樹園のむこう海の底。地下に眠る水脈天空の滝。鳥たちの楽園一面の銀河、無数の影絵を作り出すガラクタたちの影の影、鏡の国の奥の、もっと奥へ。
「よう、お帰り」
いつもあと一歩のところで、陽気なマーチに邪魔をされる。近頃新しくできた駅前広場の仕掛け時計だ。
室長はすでに起きて作業に戻っている。どこから持ってきたのか素晴らしく優雅なアーチを描く枝を組み合わせて、天井に大きな蜘蛛の影を這わせる。室内に満ちる甘い芳香。
「辿り着けたかい」
「もう一歩でした」
「残念だな」
見回せば、誰がいつのまに持ってきたのか、作業台の上に、桃がひと盛り載っていた。金色の産毛をぼんやりと見つめていると、室長が「食べていいぞ」と言う。
遠慮なく手にとり、しばらくその重みと香りを楽しむ。
なるほど。
なにがなるほどなのかは解らないが、とりあえずなにかに納得し、皮をむいてかぶりつく。甘く熟れた、夏の夕暮れの味がする。
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【ガイド】
『長考院無策寺』
不狼児さん
【ガイド】
『光の美術館』
加楽幽明さん(ひかり町ガイドブック掲載)
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いろいろ混ぜているので、どのあたりまで参照作品を挙げていいのかちと迷う。
これも挙げた方がいいんじゃないとかあれば教えていただければ幸いです。
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