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きみはいってしまうけれども

 もちろん君は俺がそんなゲームを仕掛けていることなんて知らない。なにしろこれは復讐なので。
 俺の親友という名の想い人が、突然事故で逝ったのは、5年前のことだ。
 彼女が出来ても、のろける相手なんて俺くらいしかいないような、シャイでおとなしい男だった。君の話をする時は、いつも幸せそうにはにかんでいたので、俺は奴がタチの悪い結婚詐欺に引っかかって借金まみれだったとは、想像だにしていなかった。
 許容を越えた怒りと悲しみと後悔は、人を底までつき落とした後に、奇妙な悟りへ導く。
 2年前、君に偶然出会った時、俺はあまりにおかしくて、つい、とびきりの笑顔を浮かべてしまった。今更。死んだ人間が戻るわけでもあるまいに。
 だからこのゲームはほんの少しだけ、君にもやさしい。
 さぁ、昔のアルバムをめくって、素知らぬ顔で思い出話をしよう。あくまで不幸な事故で亡くなった親友の話を。
 君は気の毒そうに眉を寄せ、けれど背筋の緊張がほんの少しゆるむ。
 ルールは簡単だ。俺が決めたいくつかのキーワードを口にしなければ、君の逃げ切り。

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2008.05.16 | Comments(0) | Trackback(-) | 500文字の心臓

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