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かつて一度は人間だったもの

 悪魔と契約したあの頃、私はただの職人だった。私の国は戦争中で、沢山の人が命を落としていた。
 悪魔の力は素晴らしい。知識は血のように体を巡り、なんなく操ることができた。大勢の人の命を救った。私の作る義体は、見た目も動きも本物そのままだった。私は人々に神様と謳われた。
 戦争が終わると、しばらくは平穏な日々が続いた。悪魔に魂を売ったせいか、私には老いる兆候もない。好きな研究に明け暮れた。
 どれだけの時が過ぎただろう。いくつかの戦争と平和の末、人々は謎の病に冒された。体は生きながらにして溶け、助かるためには、溶けた部分を義体へ替えていくしかない。
 体を失い、生殖機能を失い、絶滅に瀕した人々は、産まれない子供の変わりに、義体の技術で子供を作ることを思いついた。私はそれぞれの両親に似せ、思考し成長する機械の子供を作った。核には人の魂が必要で、人々はそうして滅びた。
 助けることもできただろう、と悪魔が問う。そうだね、と私は頷く。
 機械の人々の世界は、今のところ平和だ。生身の人より遙かに丈夫で賢い彼らは、私の手をほとんど必要としない。
 私は今でも神様と呼ばれている。悪魔は時々遊びにやって来る。

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2008.06.27 | Comments(0) | Trackback(-) | 500文字の心臓

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