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修行その2

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文章修行家さんに40の短文描写お題
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【06.電車】
 遠く遠くから、近付いてくる豪音。瞬間。沢山の人影を飲み込んだまま、夜の田圃に鮮やかな光を撒き散らし走り抜けていく。

【07.ペット】
 掌の下に潜り込むように、小さな頭を擦り付けて寄り添う。しっとりと濡れた毛並。屋根を叩くやわらかな雨音。

【08.癖】
 夏の陽射しと木漏れ日の間、アスファルトにまっすぐ伸びる白線の上を、兄は足音もたてずにひらひらと渡っていく。

【09.おとな】
 ついに未開封の五十入大箱発見! 予算充分! 「あらこんにちは」と後ろからお隣の奥さん! レジ横の電池をカゴに追加してみた。笑われた。

【10.食事】
 発泡ポリマーじみた卵とペンキのようなケチャップを銀色のスプーンでかきまわす。TVの中で誰かがけたたましく笑っている。


***

 こんなにぼちぼちで修行になるのかとかいうつっこみはいらない。
 09が情景になるのか謎だが、ちょっと気に入っているので載せてみた。

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2010.04.29 | Comments(0) | Trackback(-) | 修行

死ではなかった

 悪魔と取引したのは初めてですが、やはり対価は魂でしょうか。痛いのと見苦しいのは避けたいのだけれど贅沢かしら。
 せめて部屋の掃除だけは念入りに。下着は常に新品をつけるとして――

 万全を期して迎えたその試合は、キリン児童公園でのゲリラ開催(入場無料)でしたが、かの選手の奇跡の復活にふさわしい、凄まじい盛り上がりでした。
 来月の後楽園での本格復帰を見られないのは寂しいですが、これで悔いはありません。

「さぁ貴方のお望みは?」
 翌晩、訪れた悪魔に問うと、彼はなぜか少し頬を染め、目を泳がせました。
 そういえば魂ではなく処女という可能性もありましたね。今日の下着は桜色のプリンセス仕様です。お好きかしら。

「後楽園ホールに行きたい」

「……は?」

 悪魔はもじもじしながら、私が最後にと鑑賞していた『12.24蛍光灯666本マッチ』にちらちらと目をやりました。蛍光灯が割れるたび、尻尾がぴくぴく反応しています。
 …………ふっはっは。
 失礼、つい妙な笑い声をあげてしまいました。
 私は携帯を掴み、悪魔にテレビの前を譲りました。飲み物はビールでいいかしら。
「秘蔵写真もおつけしますわ!」

2010.04.24 | Comments(0) | Trackback(-) | 500文字の心臓

死ではなかった

 冷たくて堅い指先が好きでした。まるでお内裏さまのような、すっきりと美しいお顔が好きでした。
「さき」
 飽きず寝顔を眺めているとおもむろに薄目を明け、やわらかな声で私を呼びます。
「悲しい夢でも見たのかい」
 私はこうして微笑んでいるというのに。ずるい方。
「いいえ」
 いいえ。短いけれど、とても幸せな夢でございましたよ。
「もうおやすみください」
 問いたげな目をしながらも、深い眠りに落ちていきます。滑らかな頬に口付け、そっと体を起こすと、つ、と髪を引かれました。
 貴方の指輪に絡んだ髪を外そうとし、思いなおして懐刀を取り出しました。
 死が二人を別つまで。
 そんな誓いを、たててみとうございましたねぇ。
 絡んだ一房を根元近くからふつりと切り取り、そのまま刀を背後の闇へと投げつけます。闇に紛れていた男は、声もなく崩れおちました。
 かつての仲間を始末したとて、私の罪は消えませんが、せめて貴方の抱えた憂いを、すこしばかり払ってまいりましょう。
 さぁお別れの時間です。貴方、どうかよい夢を。


***

死ではなかった
 望んでいたもの
 永遠の別れ

 というイメージで、これはこれで結構気に入っているのですが、ツボに嵌りすぎるお題は、まずゆでこぼしてから(心臓参加時の自分ルール)

2010.04.19 | Comments(0) | Trackback(-) | 超短篇

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