あるコリトの冒険
ひかり町ガイドブックより:
【ものがたり】
『あるコリトの冒険』
ある長生きのコリトによれば、一時期コミィの供給量が著しく減り、一部のコリトが意を決してコミィを断ったことがあるそうだ(おそらくは戦時中か、ひかり町第二次開発ブームに伴う住民反対運動の時期だろう)
するとコリトの体に意外な現象が起こった。光らなくなったコリトの体はあらゆる可視光線を透過した。つまるところ透明になってしまったのだ。
コリトたちはコミィの葉で織ったチョッケを着るなど、ぶつかられないための対策を練ったが、いたずら好きなコリトはたいそう喜び、こっそりと、ヒツの住む町の探索に出掛けた。
この町にはなぜだかオノノキや天女や風船などいろいろなものが飛んでいる。体の軽いコリトはそれらに掴まって飛んだり、あるいは通りすがりのヒツに掴まったり川にコネハを浮かべたりと、様々な方法で町を探索した。
そんなある日、コリトの一人がお気に入りの場所で寛いでいると(それは素敵な洞窟で、コリトにぴったりな大きさのコタチと、美味しい種子があって、とてもきれいな山がみえたそうだ。どこだろう)突然ヒツの指が、コリトの頭をつまみ上げた。
そのまま小さなカプスルに押し込まれたが、コリトは隙を見て、上に開いていた小さな穴から抜け出した(コリトはその気になればつまようじほどに細くなれる)
しかし逃げたとすぐにばれてはまずいので、
「タツエータツエー」
と言いながら、カプスルをカタカタ揺らすと、ヒツはにやりと笑って、空のカプスルを棚に並べたそうだ。
ばあちゃんの作る黒団子はとびきり美味しいので、コリトは今はもう皆ちゃんと光っている。たぶん。
タツエは出してなのか助けてなのか、聞いてみるが、どのコリトも教えてくれない。
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【ガイド】
『富士見台』
不狼児さん(ひかり町ガイドブック掲載)
【ものがたり】
『自動人形の一族』
不狼児さん
【ものがたり】
『ニポ・コリトの歴史』
オギ(ひかり町ガイドブック掲載)
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数日前に『ひかり町ガイドブック』が届いて、何度も読み返してます。面白いです。
一本一本は独立した、しかもかなり個性の強いお話なのに、そしてなんの打ち合わせもないのに、どこか点で接していそうな感じがあって、ついつい楽しくなり、これを書いてしまいました。
そういえば、皆さんコリトの意味を掴みかねてらしたようですよーと伺ったので。
いくつかの単語の発音を若干ずらしてあるわけですが、コリトの元の発音はコビト。ニポはニッポンです。でもコリトはコリトなのです。それでいいのです。
コリト本来の言葉が先か、ヒツの言葉を誤って聞き取った一部の名詞が今も使われているのか、もはやコリトの間でもわからなくなってることでしょう。
ってお手元にガイドブックがないとさっぱり意味不明ですね。文学フリマでの発売は5月かな?
おまけを先に。ということで。
2012.01.30 | Comments(0) | Trackback(-) | ひかり町スピンオフ
